人はみな、本屋でひとりになる
さよなら伊野尾書店 近所の墓地 歌舞伎町
爪 切男
2026.04.03
読者限定
新宿区中井の伊野尾書店が、2026年3月31日で閉店した。
店長の伊野尾宏之さんには、デビューした頃からお世話になった。
新刊が出るたびにサイン本を作らせてもらい、イベントも何度も開いていただいた。
お互いにプロレス好きで、一緒に観戦にも行った。
伊野尾さん、本当にありがとうございました。
跡地には、出版社トランスビューが運営する「BOOKSHOPトランスビュー 大江戸中井店」が6月にオープンするらしい。伊野尾さんがこれからも本に関わる仕事を続けてくださるのは嬉しい。
それでも、「伊野尾書店」という名前がなくなるのは寂しい。

子供の頃、町の本屋は避難場所だった。
家に帰れば親父に殴られる毎日。相談できる相手もいなかった。
エロ本を買うか迷っている人に、「頑張れ」とエールを送った。
やたらと分厚い「月刊少年マガジン」を手に取り、この本でぶん殴れば親父に勝てるだろうか、と考えた。
電車の時刻表を必死で読んでいる人がいて、意味がわからなくて面白かった。
年齢も性別も違う人たちが、黙々と立ち読みをしている。
店長は何も話しかけてこない。ただレジにいる。
それが心地良かった。