救急車で運ばれた日にかぎって
ご無沙汰しております。爪切男です。
体調を崩してぶっ倒れてしまい、しばらく療養しておりました。毎日更新すると言っていたのに、この体たらく。お恥ずかしいったらありゃしない。ご迷惑をおかけした皆様、大変申し訳ございませんでした。献身的に看病をしてくれた妻には心から感謝しております。
ようやく仕事を再開できるところまで体調が戻りました。少しずつだが、頑張って書いていきます。どうかお付き合いください。
せっかくなので、今回の顛末を少しだけ。
あの日、これまで経験したことのないレベルの眩暈に襲われた。横になっても天井がぐるぐる回る。吐いて、落ち着いたと思ったらまた吐く。さすがに危険だと判断し、救急車を呼んでもらった。
駆けつけてくれた救急隊員の一人を見た瞬間、「加勢大周に似ているな」と思った。
死にかけているときに考えることがそれなのか、と自分でも思う。でも実際そうだったのだから仕方がない。体は限界なのに、頭の中だけは妙に忙しい。
人生で初めての救急車だった。
申し訳なさと情けなさで、心の中で懺悔を繰り返していたが、もうひとつ問題が起きた。車内が思っていたよりも狭いのだ。自慢じゃないが、私は閉所があまり得意ではない。
「すみません、少し閉所恐怖症気味で……」
そう伝えると、隊員の方がカーテンを少し開けてくれた。ほんのわずかな隙間から外の景色が見える。それだけで救われた気がした。
病院に着くと、処置室ではスタッフの方々が忙しそうに動いていた。ドラマ『救命病棟24時』で見た風景。江口洋介の顔がふと頭に浮かぶ。
私はその日、加勢大周と江口洋介のことを思いながら、眩暈を起こしていた。
「眼振はないね」
「血圧ちょっと高いね」
「採血と点滴、準備して」
さまざまな声が飛び交う中、ひとりの看護師が私を見て、ぼそっと言った。
「ハットリくん……」
その人は正しい。
だって私は『忍者ハットリくん』のTシャツを着ていたのだから。
人生で初めて救急車で運ばれた日に、それを着ているとは思わなかった。私は、患者である前に、まずハットリくんだった。
あの日関わった人は全員、最初の一瞬は同じことを思ったはずだ。
「あ、ハットリくんだ」
眩暈で死にそうな中年男が、ハットリくんのTシャツを着て運び込まれてくる。字面だけで少し面白い。不運なのか幸運なのかはわからない。ただ、こういう妙なことだけはきちんと起こるのが私の人生だ。
そこで、意識が途切れた。