ルノアールにて、人間失格

養命酒 日本酒 ルノアール はなまるうどん 太宰治
爪 切男 2026.05.03
読者限定

3月に、ひどい体調不良で救急車で運ばれて以来、一滴も酒を飲んでいない。医者から止められているわけではない。私がビビっているだけなのだ。

いや、よく考えたら養命酒を飲んでいる。薬用酒と言いながらも、そのアルコール度数は14%。これは日本酒やワインと同じぐらいの数値らしい。

嘘をつきました。

起き抜け、仕事前、就寝時と一日三回も養命酒をキメています。

とはいえ、養命酒以外の酒は口にしていない。元々、酒を飲まないとやっていけないタイプの人間ではない。祖父と親父のどちらも、酒が原因で痛い目に遭っているので、彼らを反面教師として、いい距離感で酒と付き合ってこれたと思う。

嘘をつきました。

大学生の時に一度だけ記憶が無くなるまで飲んだことがあった。飲み過ぎた日の翌朝、路上で目を覚ました私の横には、ウェディングドレスを着せられたバス停が添い寝をしていた。演劇部の部室からかっぱらってきた花嫁衣裳で、バス停と初夜を過ごしたみたいだった。その節は大変ご迷惑をおかけしました。

「飲み過ぎて覚えていません」とか、酔った勢いで異性を口説く奴が本当に苦手だ。酒を愛しているなら、酒を言い訳や手段に使うのは良くないと思う。そういう輩には、一度YouTubeで日本酒ができるまでの映像を見てほしい。

米を洗い、蒸し、麹を育て、発酵を見守る。日本酒造りにすべてをかける人たちの姿を見てもなお、あなたは「飲み過ぎてよく覚えていません」と言えるのか。うちの親父は言いました。飲酒運転で捕まったときに。

私は親父とは違う。酒は飲んでも飲まれない。酒の力は借りずに好きな人を口説く。ただし、その場所は酒場じゃない。私はいつだって喫茶ルノアールで勝負を懸ける。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、421文字あります。

すでに登録された方はこちら