殺されないためのBOØWY、愛するためのDA PUMP
誰にも自慢をしたことはないが、BOØWYとDA PUMP(ただし4人組の時代)の曲をほとんどソラで歌える。自主的に覚えたわけではない。どちらも半ば強制的に覚えさせられたものである。
「おい、お前、明日までにこのアルバム、全曲暗記して俺の前で歌え。暗記してこんかったら、お前の体バラバラにして農協の焼却炉で燃やすからな」
中学生の頃、地元で有名な極悪ヤンキーで、筋金入りのBOØWYファンの先輩が、そう言ってBOØWYの『MORAL』というアルバムを私に投げつけてきた。
漫画『魁!!男塾』の卍丸のような鮮やかな金髪モヒカンをたなびかせ、ニカッと笑った口には歯が三本しかない。さすがにバラバラにされて燃やされることはないだろうが、それに近い目に遭わされる可能性は高かった。
今さら説明する必要もないだろうが、BOØWYは氷室京介と布袋寅泰などが在籍し、日本のバンドの「かっこいい」の基準を変えた、80年代の伝説のロックバンドである。『MORAL』は、その記念すべきファーストアルバムである。
名前は知っているけど、曲はまったく知らない。まあ、田舎のど腐れヤンキーが好む音楽なんて、どうせたいしたもんじゃない。ああ、ただただ憂鬱だ。さあ、生きるためにBOØWYを聴かなければ。
ところが、である。
嫌々聴き始めたはずなのに、作品に込められたやけに乾いた初期衝動と、「俺たちはお前らとは違う」という根拠のない自信に、すっかりやられてしまった。学校、優等生、常識、道徳、社会。目につくものすべてに片っ端から噛みついていく。若気の至りの極みともいえる、ヒリヒリした言葉とメロディが、十三歳の私に刺さりまくった。
「人の不幸は大好きサ」
――BOØWY「MORAL」より
その歌の中では、知人の自殺すら笑ってしまうような人間が描かれる。こんな歌詞、それまで聴いたことがなかった。夢中で歌詞カードとにらめっこしながら、徹夜で全曲暗記を果たした。生まれて初めての徹夜をBOØWYに捧げた十三の夜。
そうか。文章や音楽では、正しいことや立派なことを言わなくてもいいんだな。
BOØWYに影響を受けまくった私は、その後、運動会の感想文に「クラス対抗リレーで、二組の村井君がバトンを落としたとき、僕は思わずニヤッと笑ってしまった」という怪文を書き、職員室に呼び出される羽目になった。
DA PUMPの曲を覚えたのは、愛する人のためだった。
長崎の大学に進学した私。二十一歳にしてようやくできた人生初の彼女。美容専門学校に通う一つ年下の彼女。海上自衛隊員と陸上自衛隊員と3Pをしたことがある〝海と大地を制したビッチ〟なのに加え、家族ぐるみで変な宗教をしていたけれど、私は彼女のことを間違いなく愛していた。
そんな彼女が私より愛していたもの。それがDA PUMPだった。