机にババア、飾って暮らす
昨年の秋に亡くなった祖母が、ようやく夢に出てきた。もうすぐ一年。もうちょっと早く出てきてくれてもいいだろうに。
婆ちゃんが死んだ日の夢には、なぜか関根勤が出てきた。
「爪くんさ、和久井映見って名前さ、字面も含めて完璧な名前だよね」と語る関根さんに、和久井映見主演の『夏子の酒』がどれだけ素晴らしいドラマだったかを熱弁する私。「しかし、爪くんさ、『夏子の酒』ってタイトルも完璧だよね」と、どこまでも完璧にこだわる関根さんに無性に腹が立った。関根さん、完璧なものほどつまらないことはないですよ。
映画『千と千尋の神隠し』で千尋とカオナシが乗った海原電鉄のような列車に、婆ちゃんと向かい合わせで座っていた。列車は広大な水面を滑るように走っている。行き先がおそらく三途の川なのは、夢の中でも分かっていた。
終点が近づいたのか、水の流れが激しくなったところで、婆ちゃんに促されて私は列車を降りる。
「婆ちゃん、約束守ったよ。婆ちゃんが死ぬまで警察のお世話にならんかったよ」
「ようがんばったなぁ。でも、まだ半分あるからな」
「え~、まだ半分かぁ」
それでお別れだった。
目が覚めると、あら不思議。微熱、めまい、鼻づまり、慢性的な肩こりが嘘みたいに消え、身体が軽い。いやいや、あのババア、俺に取り憑いてやがったのか。婆ちゃん、あなたの愛と恨み、確かに受け取りましたよ。

婆ちゃんに取り憑かれている頃の写真です
婆ちゃんがあの世に行った日から、仕事机に写真を飾っている。
家族写真に無頓着だった私が、今では妻との結婚写真や婆ちゃんの写真を、目につくところに置いて暮らしている。結婚もそうだが、四十を過ぎてこんな人生が待っているとは思わなかった。
婆ちゃんに『あと半分』と言われた残りの人生、もう少しだけ、あれこれ照れずに大事にしてみようかな。
写真といえば、二十代で東京に出てきた頃、都会でひとりぼっちの自分を勇気づけてくれる相棒が欲しくなり、インターネットで拾った見ず知らずの外国人の写真をプリントアウトして部屋に飾っていた。